“I want” / No.006 籔 裕介
ヤブと出会ってから、もう20年以上は経つのかな。
出会った頃は、ガサツで品がなく、土足でズンズン絡んでくる俺を、
きっとイヤな先輩だと思っていたことでしょう。ワハハ。
今回はアーティストしてではなく、職人として、
ドットコマずに本名で撮らせてもらいました。
俺が映像を撮り出して、
音楽をつくる人としてのヤブとの最初のセッションの機会になったのは、
EVER GREEN COFFEEの竹中との「山と珈琲」。
実際にそのときの山行の中で収録した音を使って楽曲をつくるという手法、
とてもおもしろいなと思いました。
俺がまだ六甲山に初めて連れて行ってもらう前、竹中とヤブで登山していたときの話。
堰堤の隙間を渡るときに音が反響して、さらに虫の群れの羽音が反響して、
その音をマイクが拾って、うわああああああああとなっていたという話、おもしろいです。
しかも、そのときイヤホンでのチェックの音にちょっとリバーブかけていたという。
なんでちょい増し設定にしていたのかというところ、けっこうずっと笑えます。
「山と珈琲」も本数が貯まってきて、
たまにプレイリストで連続再生して見返します。
山行の記憶が蘇るとき、俺の脳が引き込まれるのは、
映像よりも、ヤブがつけてくれている音のほうだと感じています。
気持ちよかった日差しや風、過酷で緊張感のあったポイント。
温度や湿度、匂い。心身の状態。
ヤブが録音してくれている音のほうに紐づいて、
あのときの山行の記憶を思い出す感覚が俺にはあります。
これが、フィールドレコーディングのおもしろさなのかなと思います。
まあこれは、同じ山行の時間を共有している俺たちにしかわからないことかもしれませんが。
俺は映像で記録するということに興味があり撮影していますが、
それは音であっても、「記録する」ということはやっぱりおもしろいですね。
やめられないです。
いよいよ1週間後、来週末には、
俺の地元の祭り「河辺太刀振り」に記録班として参加します。
1年に1度のハレの日、特別な非日常。
あのブッ飛んだ2日間の行程にまた臨めるのが楽しみで仕方ないです。
ヤブといっしょに記録するのも、これで3年目。
去年までは、俺たちの1番、
切り込み隊長のPGヤマシも撮影に来てくれていて3人体制でしたが、
ヤマシは転勤のため東京に行ったから今年はヤブとふたり。
ヤマシの分も、しっかり記録させてもらいます。
ヤブといっしょに制作した作品もけっこう増えてきたな。
合わせに行くのではなく、現場に入れば自然に息が合うような、
そんな伝達や交換ができているように感じます。
緩んでいるし、抜けている。余計な緊張はもうない。
せっかくなんで、高速餅つきの阿吽の呼吸を目指して、
これからも何かいっしょにつくっていきたいなと思います。
ヤブとの現場は楽しいです。
仕上げの際も、俺の疑問やアイデアに、ヤブはいつも親身になって寄り添ってくれます。
そんなヤブのやさしさに寄りかかって、俺もついつい色々言いがち。
でも、お互いのイメージがバチッとハマったときのキタ!!感を浴びて、
またすぐ次のものつくりたくなりがち。
ヤブのやさしさは、ヤブがつくる音の隅々に出ていると思います。
撮影ひとり、録音ひとりのふたり組なので、
そんなに大掛かりなことは出来ませんが、
小さな記録物ならば自分たちにも何か出来ることがあるかもしれません。
何か留まるものがありましたら、お気軽にお問合せください!
2025/10/04 - MOVIE
